Walk,Melos.

勇者は、ひどく赤面した。

頭の悪い日

 だって君が君たらしめているものは容姿だけではないのだもの。過去のぼくは本質を見ないで後悔という言葉を乱用した。幼くてかわいいあたしを守るのはいつだって自分の正当性を主張するという行為の中にしかなかった。自分の気持ちに共感してくれる言葉たちに都合よく酔いながら、ときどき自分でもそういった言葉の羅列を創造したけれど、残るのは空っぽの深夜。自分の容姿は好きでなかった。誰かが好きになってくれたあたしがどのあたしなのか、無理をしてつくったあたしが大好評で誰もがいい子だとウワサされることは大変につらい。大きな期待を背負わされたり、少しも油断ができないということはストレスでしかない。だけど誰かから好意的に思われることは心地よかったからぼくはまだ壊れずに済んだ。みんなぼくが笑うと喜んだ。ぼくはお道化していた部分もあるけれど、実際笑うことが好きだった。まあまるで人間失格のシーンさながら、賢くて勘のいい友人に、あたしは無理してるだとか何で素を出さないのとか聞かれることもあったけれどぼくは誰かとそういう深い話をすることが苦手だったし、自分の中の、やどかりの柔らかい実の部分みたいなところについて詮索されることもつつきまわされることもお断りだったからそれはまあ適当に笑って胡麻化した気がするけれど、たぶんあたしのそういうところは好かれないんだろうな、とかなんとなく反省しながら来週の期末考査のことなんかを考えていた中学時代の自分は、今の自分から見ればまだなんというか可愛くみえてしまうからへんな話。

 やることもたくさんあるのにゲームばっかりしてつぶした一日の後にのこるのはやっぱし空っぽな深夜と少しの空腹感、脱力感、頭痛。魚釣りばっかりしていたらこんな時間だ。余談だけれどぼくは魚を捌く動画をよくみるけれど、まだ一度も魚の完成体を捌いたことはないし三枚おろしさえまともにできるかどうか怪しい。コメント欄に、「魚を捌ける女性はポイントが高い」とひとこと。女性の価値はポイント制であるのだろうか、だれがそこに価値を付与するのだろうか、累計ポイント数なんて目に見えないのに、毎日頑張って生きているあたしは0ポイントでしただなんていわれたら泣き崩れてしまうかもしれない。そのポイントを稼いだら一体誰にモテるのだろう、でもそんな風に、異性をポイントなんかで評価する人にモテたって1ミリもうれしくないだろうなとか思ったりするモテないあたし。別に今のあたしはとても充足しているのでどうでもいいですけどいつか魚は捌いてみたいですね。

 さて明日からどうやって強く生きていこうかという例の件についてはまだ見通しさえ立たないのでしばらくは漂流するように毎日を無駄にしながら魚ばかり釣り続けることになるでしょう。外出自粛要請という名のもとにあたしは夜、バイトのシフトが入っているのは何事かと過去の自分を恨むけれど、もう最近はあふれる矛盾の波にのまれて感覚が麻痺してしまいましたので元気に出勤いたそうぞ。出るなと言われるとそれを破りたがる天邪鬼な人や必要火急のご用事でいらした人のためにあたしは自分を犠牲にしてそれでお金が支払われるのだけど、最後の出勤となると少し寂しい気がしなくもない。見たくないものはみなければいい。否見てはいけない。自分の苦しみや悲しみを、さらに強い苦しみで相殺して少しも前に進めないで泣いてばかりいる非生産的な生活がいかに無駄であるのかを自覚しなければいけない。けれど一度きりの人生であるのだからあなたが気のすむように生きればいいさぼくの知ったこっちゃないもの。ただぼくは君と違って大人になりたいしならなければいけないのサ、。

 部屋に置いてあるものを捨てられずに毎日怒られているけれど、月並みにいつか使うかもとかそういう意図じゃなくて、その一つ一つにまつわる思い出なんかを捨てられないので、たぶんこれからも部屋に置いてあるものは減らないし、これからもそれがたくさん増えたってぼくは一向に苦痛ではないと思います。もう眠たいので寝ます。

 あたしは最近も昔からもずっと、どうして人間の心は目に見えないんだろうと、悩んでいます。心の所在地についてよく道徳なんかで、胸に手をあててここに心がありますなんてにこやか~に言いながら、うん、そうだね、答えは一つじゃないね、みたいな授業のあの流れ、いえ、心というものは、感情というものは脳の働きによって生じるものだろうと頑なにあたしは信じていたけれど、もしかすると小学校の同級生らは幼くもアリストテレスの思想を信奉していたのかもしれない、そして現代科学の知識に縛られたあたしを憐れむように、人間の本質について問いかける機会を与えてくれていたのかもしれない。いや絶対そんなことねえけどな。だからまあもう少し柔軟性をもって物を考えなくてはいけないなって最近それがあたしの課題だってことです。今日は頭の悪い文章しか書けなかったね。おしまい。