Walk,Melos.

勇者は、ひどく赤面した。

どきどき

 レジ打ちのとき、たった一人に接客するたびに息が切れてしまうことを、親は信じない。自律神経という言葉を出せば、甘えだとに睨まれる。ぼくは健常者であることを強制されている。昔から、そうだ。なぜ、素を出して話さないの、と問われる。僕は君みたいにきれいに生きられないのさ。「壊れるのが怖いから」そういうと、そっか。わかる。と、言う。それだけでいいよ。君は所詮、僕の友達。

 夜のにおい。川の流れ。丸い石。とても楽しかった。見るもの全てが、きらきらして、みえた。だけど、誰といても、話していても、たった一人であるような気がした。自分が無能であるがゆえ、来るべきではなかったとさえ思った。わかっていた、僕はいようがいまいが、何も変わらない。役立たず。孤独だったけれど、楽しかった。久々に、少し笑った。

 幻滅。恐怖。嫌悪感。買ったざくろは腐ってしまった。コンビニの前でたむろする高校生。僕のことを見て、どうしてそんなにニヤニヤするの。泣きたくなった。すぐそばに、バス停。ぼくに声をかけてくる一人の男の人。曰く、バスに乗るときは、声をかけてください、と。高い声で。ニヤニヤしていた、乗りません、と言って立ち去った。

 君は私の目を大きいと言う。どうせなら、もっと、深みのある静かな目を持ちたい。だとすれば、「明るい未来!」「楽しい生活!」みたいな雰囲気を出さずに済むかもしれない。僕は純粋じゃない、優しくない。でもたばこは吸わない。

 寝なかった。少し話したり、黙ったりした。認識学の話や宇宙の話をした。時間に関する僕の見解は、少し難しかったらしい。勉強の仕方や、夢の話。こんなぼくにも、夢はあるのさ。だけど、それは、本当にしたいことを少しずつ諦めた結果だった。死ぬこと。さっき感じた嫌悪感、これを話したときは少し怒られた。ぼくはべつに構わないで話し続けた。いろんな理不尽のせいで、ぼくは両足の付け根がぼろぼろになった。手にも、いろんな傷がついてしまった。それを話さずにいられるわけがないだろう。誰も褒めてはくれない。当たり前のように生命を享受する。それでもぼくは怒らずに、洗い物をしたり、片付けをしたりした。ただ単に、なにもかも諦めていた。何にも、分かり合えないんだと理解した。

 恋しくなった。だれも気付かないから。もう、くだんない話をしているの、聞きたくなかったから。もう、なんか全部どうでもよくなって。石の上なんかに乗って、汚い話をしているの聞かされるの、最悪でしょ。凍ったおにぎり、新鮮なざくろ。あのときまでは、よかったのに。言えないけど。言えないけど。そんな僕のこと、寝てないからメンタルが、とか言う。許さない。

 帰り際、ぼくの小指のネイルに気づいてくれる。黒じゃん。ちょっとうれしいじゃん。別にそれだけ。

 いろんな人に会いすぎて、最近は、少し疲れた。でも、少しずつ、自分のことがわかってきた。僕はあのとき、話して怒られたこと、反省した。ぼくはまだまだ君より子供だから。ごめんなさい。ぼくは、もうすこし、反省して、素直になりたい。

 すっぴんで乗る山手線はもう、いやいやだ。生きるか死ぬかなんて、他人かどうこう言う問題でないと思うよ。うわべだけの同情はいらない。