Walk,Melos.

勇者は、ひどく赤面した。

泣き腫らす焼き腹須

 今日は蟋蟀を食べた。新宿でぶらぶらしていた私たちは、小学生みたいに目を輝かせながらヴィレヴァンを探索することにした。ぼくの好きなyoutuberが「クソまずい」と渋い顔をしていたお菓子が売っていたり、生理ちゃんの漫画を立ち読みしながらちょっとアレな話をしたり、100日後に死ぬワニの幸福を願いあいながら、僕らは奥地へと歩みを進めた。そんなときに二人は、蟋蟀と邂逅する。

 1000円あったら何買える。プチプラコスメ。上手いラーメン。即売会ならCD1枚。そしてバッタミックス15g。よりによって僕たちはバッタを選んだ。なにか新しい刺激を求めていたのかもしれない。「1匹だけなら」と言いつつ、頭部のかけらをかじって、「乾燥させたサクラエビ!」と、いつもの優しい笑顔を僕に向けた彼女。僕は残されたあとこれだけの蟋蟀やバッタを食べきらねばならない。僕はおどけながら蟋蟀を一匹、ひょっこり口に入れて咀嚼した。「工場の端に落ちてるアレの味」と形容すると、彼女はまた笑う。喧噪であふれるサイゼリヤの一角で、ふと、ずっとこうしていたいとさえ思った。その人は、僕にはもったいないくらいの素敵な友人である。

 巻いた髪はすっかりぺたんこ。雨を嫌いと初めて思った。煩わしい誘いのLINE。母親と食べる生焼けのステーキ。ピリピリするグロス。こんなんでキスが上手くなるっていうのかい。また始まる母親の癇癪。理不尽な叱責。声を殺してなくあたし。タイムラインに流れてきた知らない女の子のインスタの自撮りを見て、また涙。こんなに可愛けりゃ、もっと人生楽しかろ。全身整形したいと思った。そんならもういっそ自分でなくたって構わない。魂も記憶も全部消して、かあいい人に生まれなおしたい。でも、貯金して渡韓する勇気はない。いつかどこかに、こんな汚いあたしでも全身で愛される日が訪れるだろう、という幻想をまだ捨てられないから。斜に構えてる性格とか、実はそんなに嫌いじゃないから。あたしは自分のこと気に入らなくても、ローリーズファーム来て、サマンサタバサ持って、埋没法でぱっちりかわいい二重にして、TDLでジャンプしながら写真撮ってインスタに載せて♡待ってるようなキラキラした生活はしたくない。そういう人はとても輝いていて楽しそうだし、人生充実しているだろうけれど、私はそうはなれない。ぼくはひねくれている。僻んでいるのだ。羨ましい。

 2年生からの生き方について考えなければならないのに、やることは山積している。僕はこれ以上人生を厭わないように、自分になにか救済処置を与えなければならないのに、その方法は見つからない。自分のしたいことや未来を明確に掴めない。確立できない。サカナクションを聞きながら、若さを消費している。全部無駄ではないけれど、周り道ばかりだ。また、ウィリホの一階で一人で寂しく飯食う1年を送ることになるかもしれない。つまらないプライドなんざ捨ててしまえばいいのに。もう1年生きられるかしら。